【曲紹介】もう間もなく?2027年が舞台のSF映画が題材『メトロポリス1927』
パンフレットのために書いていただいた曲紹介をWebサイトで公開しています!
第1部のメイン曲として演奏するピーター・グレイアム作曲『メトロポリス1927』は100年前のモノクロサイレント映画を題材にした作品です。
「当時の100年後」である2027年はすぐに私たちに訪れます。100年前の人々はどのような世界が来ると想像したのでしょうか。
「予習をして演奏を聴きたい!」という方はリンク先の音源・映画と合わせてぜひご覧ください。
メトロポリス1927 / ピーター・グレイアム
本曲の題材は、今からおよそ100年前の1927年にドイツで公開されたモノクロサイレント映画『メトロポリス』である。この映画はSF映画の金字塔と名高く、後の作品に大きな影響を及ぼしたと言われている。
映画の舞台は摩天楼がそびえ立つ未来都市「メトロポリス」。その地下には、都市を支える巨大な工場と、労働者(=手)の街があり、工場では労働者が休みなく働いている。対照的に、地上には資本家や知識人の富裕層(=脳)の街があり、摩天楼の最上部には特権階級の人々が住んでいる。
メトロポリスの支配者フレーダーセンの息子フレーダーは特権階級の1人であった。しかし、フレーダーは労働者階級の女性マリアに遭遇し一目惚れしてしまう。フレーダーはマリアを追って地下世界に初めて足を踏み入れ、惨憺たる労働環境を目の当たりにすると同時に、彼女が労働者の信仰を集める聖女のような存在であることを知る。マリアは「脳(知識階級)と手(労働者)をつなぐものは“心”でなければならない」と労働者に説いていた。フレーダーは、脳と手をつなぐ媒介者になることで、マリアと共に地下世界の惨状を改善するために奔走する。しかし、支配者の立場を失うことを恐れた父フレーダーセンは、マリアを模したアンドロイドを地下世界に送り込み、フレーダーとマリアの試みを阻止しようとする......。
これ以上のネタバレは控えておこう。100年前の映画なので著作権が切れており、YouTube等で無料で視聴できる(映画『メトロポリス』)。興味を持った方は是非ご覧いただきたい。
実は、本曲は、映画音楽のアレンジではなく、映画中の視覚的表現を音により描写したものとなっている。曲中では、労働者が都市機能維持のために過酷な労働を強いられる殺伐とした場面や、上位階層がナイトクラブで享楽する低俗な場面、そして純真無垢なマリアが大聖堂で教えを説く安らかな場面などが、直感的に描写されている。16分音符の機械的な旋律や切り刻むように鳴り渡る打楽器音は休むことなく機械のもとで働く労働者を、緩徐部の神聖な響きは人々の幸福を純粋に祈るマリアの姿を表しているのだろうか。フィナーレは、階級によって二分された人々が「媒介者」を通じて1つになることを象徴するかのように壮大に奏でられ、圧倒的なロングトーンにより楽曲は幕を下ろす。
(文 瀧康二 & 吉崎高士)