【曲紹介】未来への希望に満ちた若者へ向けて『A New Arrival~新しき人へ』


パンフレットのために書いていただいた曲紹介をWebサイトで公開します!

本日から4回に分けてお送りしますので、「予習をしたい!」という方はリンク先の音源と合わせてぜひご覧ください。

A New Arrival~新しき人へ / 河邊一彦

未来への希望に満ちた若者へ向けて作られた作品。作曲者の河邊一彦氏は、1977年10月から2010年3月まで海上自衛隊音楽隊に所属し、クラリネット奏者・指揮者として国内外で演奏活動を行った。

楽曲は金管楽器の華々しいファンファーレで始まり、すぐに快活なテンポの音楽に切り替わる。その中で現れる曲想や旋律は様々なキャラクターを持っており、まるで、これから待ち受ける新たな人生に対して期待や不安などを抱く者たちを象徴するようだ。中盤ではワルツの曲想に変わり、大きな流れを持つリズムの上をジャズテイストのフレーズが交差する。再び快活なテンポの音楽に切り替わると、転調と共にバンド全体で大合唱の音楽が繰り広げられ、最後は冒頭のファンファーレが再現され最高潮のうちに締め括られる。

新たな門出に立つ者の多い本楽団。各団員の様々な思いを演奏から感じ取っていただければ幸いである。

(文 瀧康二)

マードックからの最後の手紙 / 樽屋雅徳

2009年に出版された樽屋雅徳氏による作品。同氏による他の作品には、『斐伊川に流るるクシナダ姫の涙』や『マゼランの未知なる大陸への挑戦』があり、いずれも高い人気を誇っている。

1912年4月、世界最大の豪華客船としてニューヨークへ向けて出航したタイタニック号は、その処女航海を終えることなく海の底へと沈んでいった。曲名にある「マードック」はタイタニック号に乗船していた一等航海士の名であり、船が沈む最後の瞬間まで乗客の救出にあたった勇敢な乗組員である。彼は、航海中、家族に手紙を書くのが日課であった。その手紙には自分の近況はもちろん、家族を気遣う思いが必ず綴られていた。

楽曲では、穏やかな海、人々の賑わい、そして氷山への衝突、混乱の様子が描かれる。静寂な海の中から聞こえてくるようなピアノソロの後には、マードック自身の祈りともとれるような美しい音楽が広がり、盛大なフィナーレを迎える。私たちの手紙を「読む」ように聴いていただければ幸いだ。

(文 吉崎高士)

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